基本的な診療の方針
婦人科診療の中心は、婦人科がんの集学的な治療です。婦人科がんに精通した専門医が、正しい診断と手術療法や化学療法、放射線療法などの治療選択肢のなかから、適切な治療を提案できるよう心がけています。
単にがんが治ればそれでよいということではなく、妊娠できる能力を残した治療(妊孕性温存治療)や体に負担の少ない手術(低侵襲手術)など、それぞれの状況にあわせた治療の選択肢を、患者さんとともに話し合い、納得した治療が受けられるよう、努力しています。
子宮頸がん
子宮頸がんは、若年女性で最も多いがんのひとつです。I/II期がんでは、主として自律神経温存の広汎性子宮全摘出術を行い、III/IV期がんでは、放射線療法、化学療法の併用により治療成績の向上に努めています。
子宮頸がんの前がん状態にあたる高度扁平上皮内病変の治療方法として、円錐切除術もしくは妊娠分娩への影響が少ないレーザー蒸散術を行っています。
子宮体がん
子宮体がんは、婦人科がんで最も多く、近年増加傾向です。早期がんに対しては、ロボット支援下手術や腹腔鏡手術による低侵襲手術を積極的に行っています。進行がんでは、手術療法、化学療法、放射線療法を組み合わせて、できるだけ根治できるよう取り組んでいます。
ごく早期の子宮体がんで、妊娠を希望される患者さんに対しては、ホルモン(高用量MPA)療法により子宮を摘出せずに保存的に治療することも行っています。
卵巣がん
発見時にすでに広い範囲にがんが広がっていることが多く、婦人科がんの中では最も治りにくいがんです。しかし、最近は手術療法と化学療法、分子標的薬を組み合わせた治療により、その治療成績が改善しています。腫瘍の特徴にあわせて適切な治療選択を行うことを心がけています。また、進行がんや再発がんであっても、治癒を目指して、積極的に腫瘍減量手術を行っています。
正確に診断された初期の卵巣がんで妊娠を希望される患者さんに対しては、片側の卵巣と子宮を残し妊娠できる状態で、良好な予後と術後の妊娠成立との両立をめざした治療法選択の可能性を探ります。
低侵襲手術
婦人科疾患として最も多い、子宮筋腫、良性卵巣腫瘍、子宮内膜症の手術療法においては、可能な限り腹腔鏡手術やロボット支援下手術を取り入れています。
また、粘膜下子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどの良性疾患では子宮鏡という内視鏡を用いることにより、開腹せずに治療を行うことができます。
HPVワクチン外来
子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因です。2020年7月承認された9つの高リスク型のHPV感染を予防するワクチン(9価ワクチン)は子宮頸がん原因となるHPV感染を約90%予防します。当科では、2021年10月以降は9価ワクチンに限定して接種を行っています。ただし、子宮頸がんを予防するもっともよい方法は、「HPVワクチンに加えて子宮頸がん健診を受けること」です。
リスク低減手術
遺伝性乳がん卵巣がん症候群女性では、卵巣がんに罹患する可能性が約20~ 40%あります。当科では、遺伝性乳がん卵巣がん症候群女性に対するリスク低減卵巣卵管摘出術を行っております。